街に出没するタイプのヌラリヒョンは少年ジャンプの漫画などでも有名になりましたが、特に人に危害を及ぼしたり、驚かせることすら稀な不思議な妖怪です。
普段は和歌山などの山に生息し、忙しい夕方や年末などに勝手に家に入ってきて、まるで自分の家のようにお茶を飲んだり、勝手にタバコを吸ったりして、いつの間にか帰ってしまう……という性質を持っています。
因みに和歌山では今でも割と、親戚や近所の方が玄関を開けて入ってきてから家人がいるかどうか確かめるようなところが残っています。
我が家の母方の実家もそのような村で、昼寝をしていたら祖母の親戚が冷蔵庫から勝手にお茶を出して飲んでいたという体験をしたこともあります。
迷惑といえば迷惑ではありますが、現在の舅姑が勝手に家に入ってきて夕飯を食べて帰っていくような現象です。
知り合いや親戚の方が来ていて家事や仕事が進まなかったときの言い訳のために生まれたのかもしれません。
因みにこのヌラリヒョンという名前はもともと海坊主の一種で、顔も手足もないぬらぬらとした外見で、思いもかけないときにヒョンと海面に現れることからついたといわれています。
研究者の説明では、これはひょんなことなどという言葉と同じ語源だそうです。
妖怪の親玉として初めて紹介されたのは、小説家であり民俗学者でもあった藤沢衛彦氏の書いた書籍だそうで、その後水木しげる氏が鬼太郎でライバルとして登場させたことから更にその性質が強くなりました。
とはいえ、基本的に何ができる妖怪でもなく、とりあえず偉そうに我が物顔で家の中に入ってくるだけですから、妖怪の親分と言われても強そうなどとは思えません。
会えば死んでしまうといったたぐいの妖怪以外は、大体このようなとらえどころのないものだったのかもしれませんね。
本所七不思議一覧
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- 送り拍子木(おくりひょうしぎ)
- 燈無蕎麦(あかりなしそば)別名「消えずの行灯」
- 足洗邸(あしあらいやしき)
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