現代妖怪である口裂け女や花子さんといったメジャーな怪談以外にも、古くから伝わっている街の妖怪の怪談はたくさんあります。
例えばイヤヤという妖怪は追いかけてこない口裂け女のようなものですし、お寺の居住区に勝手に住み着いている古庫裏婆も花子さんのような妖怪です。
特にぞっとする街の妖怪の怪談に手の目があります。
肝試しのために京都の七条にある墓場へ出かけた男がいました。
そこではげ頭のおじいさんに出会ったのですが、おじいさんは手のひらについた目で男を見ながら追いかけてきます。
さすがに怖くて逃げ出し、お寺にかくまってもらったのですが、手の目はそれでも追いかけてきて、男が隠れたところでこりこりと犬が骨を食べるときのような音を出してから去っていきました。
僧が男の姿を確認すると、骨を抜き取られてぐにゃぐにゃになって死んでいたということです。
手の目の怪談もいくつかバリエーションがあって、盲目の方が強盗に襲われ、その強盗の姿をひと目でも見たいという怨念から手のひらに目がついた妖怪になったというものもあります。
映画のパンズラビリンスにも、手のひらに目がついた怪物が出てきます。
ほかにも盗癖のある女性が両腕にびっしりと目がついた妖怪ドドメキになったり、障子に目がいっぱい現れる目々連など、目に関する妖怪はビジュアルが鮮烈にホラーですね。
ほかには夜まで遊んでいる子供を真っ赤に焼けた鉄のお鍋がさらっていく鍋下がり、東京の怪談を集めた本所七不思議なども怖い妖怪の話だと思います。
百物語をしている人のところにあらわれる青行灯(青行燈:あおあんどん)などもいますから、もしいま真夜中にお読みになっているなら、すぐ後ろにいるかもしれません。
鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より【否哉(いやや)】
鳥山石燕 『今昔百鬼拾遺』より【古庫裏婆(こくりばばあ)】
『諸国百物語』より、手の目のモデルとなったとされる怪談【ばけ物に骨をぬかれし人の事】。左側の老人の左手に目玉がある。
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