昔話に登場する山の妖怪には、愉快な話が伝わっているものと、恐ろしい存在だというものがありますね。
中でも特にお気に入りの、山の妖怪の怖い話をご紹介します。
サトリの怪という妖怪がいて、ある人が夜の山小屋で作業をしているときに、火に当たりにきたそうです。
何だかよくわからない毛むくじゃらの姿が怖くて『これはサトリというやつか』と考えると『お前はいま、おれのことをサトリというやつか、と思っただろう』と先に言われます。
『気味が悪いな』と思うと『気味が悪いと思っただろう』と、『とって食われるのかな』と考えると『とって食うと考えてるだろ』と言われ、一つ目でじろじろとにらんできます。
焚いていた火に震える手でマキをくべて、無視することに決めると『無視しようと思ってるな』と言ったサトリの一つ目に、生乾きのマキがはぜた火の粉が飛びました。
『人間はいつも思ってもいないことをする!』と言いながら、サトリは逃げて行きました。
この話で一番怖いのは、サトリが一言も自分の話をしていないことではないでしょうか。
気持ち悪いとか、自分に危害を与えると考えたのは自分自身で、サトリに襲われて食べられてしまった話は伝わっていません。
また最近ではネットで流行ったヤマノケ(山の怪)という都市伝説や、遭遇しただけで病気になったり死んでしまうヤマヒメ(山姫)という妖怪などもあります。
一昔前まで日本の山々は異界でしたが、生活上どうしても関わらなければいけないシチュエーションがたくさんあったことの現れです。
世界遺産登録で富士登山や、定年後の楽しみとしての山登りがスポーツとして人気ですが、命を守るために最低限気をつけなければいけないことを昔話から学んでも良いと思います。
コメント